(4)登記をするために必要なおもな添付書類
添付書類のことを述べる前に、なぜ登記というものが必要なのか、そしてなぜ登記申請には添付書類が必要なのかを、簡単にふれておくことにします。
登記とは、不動産に関する物理的現況と権利関係を、登記所という国家機関に備える登記簿に記載し、これを公示する制度だと定義されています。
すなわち、登記することは、自分の不動産の権利を主張できる対抗力を得るためといえます。
登記をするには、登記所へ登記申請を行なわなければなりませんが、その場合、添付書類というものが必要となります。登記申請が間違いなく申請人の意思で行われ、申請によって求めている権利変動が事実であるこを裏付けるためのものです。
◎登記権利者、登記義務者
登記権利者とは、登記をすることによって利益を受ける人、すなわち売買による所有権移転登記であれば、買主となります。これに対して登記義務者とは、登記をすることによって不利益を受ける人、すなわち売買による所有権移転登記であれば、売主となります。このような登記権利者、登記義務者という用語について少し理解があれば、添付書類の説明を理解するにあたって参考になると思います。
1.登記原因を証する書面(原因証書)
原因証書とは、登記すべき物件変動の原因である法律行為又は法律事実の存在を形式的に証明する書面のこと、とされています。例えば、所有権移転登記であれば売買契約書、売渡証などをいいます。
なぜ必要かといいますと、登記申請どおりの物権の権利変動の事実を明らかにするためです。そして、この書類に登記済印が押印され、登記が完了したときに申請人に交付されて、新しい登記済証(権利証)となります。
この原因証書には、例えば売買による所有権移転登記の添付書類としての売渡証であれば、売主及び買主の住所氏名、売買であること、売買した日付、不動産の表示が必要となります。
また、この原因証書がない場合には、申請書副本といって申請書の写しをつけて登記申請することもできます。
2.登記済証(権利証)
俗に権利証といわれるものです。登記申請手続では最も重要な書類です。
この書類を登記申請の際に添付することによって、登記義務者(売買による所有権移転登記であれば売主)の登記申請意思を確認することになります。登記済証は登記義務者本人しか持っておりませんので、それを添付させることによって本人の申請意思が確認され、虚偽登記の発生が防止されます。
登記済証とは、登記義務者が所有権などの権利の取得を登記した際に、原因証書(又は申請書副本)に登記済の記載がされ、登記所から交付を受けたものです。登記済証には、必ず不動産の表示の記載があり、法務局の四角い登記済印が押され、その判の中に登記受付年月日、受付番号があります。
登記済証は、滅失したり紛失したりした場合「再発行」はされません。登記済証を滅失又は紛失して、登記申請の際に添付することができない場合には、その代わりとして保証書2通を添付することになります。
保証書とは、登記義務者が人違いでないこを、過去に登記申請ことのある成年者2人以上が保証した書面をいいます。
この保証書を添付させる理由は、登記済証と同様、登記申請手続の真正確保にあります。つまり、保証書の作成交付を依頼した人が真の登記義務者本人であることを、保証人2人以上が保証するため、その保証書にもとづく登記申請は登記義務者の真意にもとづくものと判断できるからです。
3.印鑑証明書
個人の場合は市区町村役場から交付を受けるもので、登録した印鑑、一般的に実印の印影が、本人のものに間違いないことを証明した書類です。登記申請の際、常に印鑑証明書の添付が要求されるものではありませんが、例えば、所有権移転登記や抵当権・根抵当権設定登記等の申請には、登記義務者の印鑑証明書の添付が必要となります。登記義務者が申請書又は委任状に押印した印影を印鑑証明書と照合することによって、本人の印鑑が押されていることを確認し、登記義務者本人の申請意思(売却の意思又は担保提供の意思)にもとづく申請であることが確保されます。
添付する印鑑証明書は、作成後3か月以内のものでなければなりません。
4.住所証明書
住所証明書とは、住所地を管轄する市区町村役場で交付される住民票の写し、すなわち住民票謄本又は抄本をいいます。
所有権移転登記の際に登記権利者の住所証明書を添付するのは、虚無人(実在しない人)名義の登記を防止することと、誤った住所で登記した場合の混乱を未然に防止するためです。
添付する住所証明書は、特に有効期限の定めはありません。
5.代理権限証書
登記の申請手続きを代理人によって申請するとき、その代理人に代理権限があることを証明するための書面、すなわち代理権限証書といわれるものが必要となります。
代理権限証書には、(イ)官庁又は公署が作成する場合 (ロ)登記申請を司法書士等の第三者に委任する場合に作成する場合がありますが、ここでは(ロ)についてのみ説明します。
一般的に、委任状といわれるものです。司法書士等の第三者が登記権利者・登記義務者に代わって登記を申請する場合は、委任状を添付することが必要となります。
委任状に記載する要領は次のとおりです。
受任者の住所氏名、委任年月日、不動産の表示、委任する登記の内容を記載し、委任者本人自身が署名、押印します。
委任状には有効期限の定めはありません。
6.固定資産評価証明書
固定資産評価証明書とは、不動産の固定資産課税台帳の写しのことで、不動産の価額が記載されており、登録免許税を計算する基礎資料として添付します。
登記申請の際は、登記の目的によって一定の登録免許税を納付しなければなりませんので、この書類が必要となる場合があります。